
トマト担当の”たに” です!

9月1日に大玉トマトを定植して、新しい栽培試験が始まりました。昨年と同様に、9月中旬ごろに1段目の花が開花して、10月下旬ごろに収穫できるかなというところです。しっかりとした試験ができるよう、管理を頑張ります!!
さて、ブログの内容ですが、前回は、放射状裂果、同心円状裂果、チャック果、花落ち果、空洞果を紹介しました。今回も引き続きトマトの不良果について紹介します。


↑尻腐れ果:トマトのお尻部分(果頂部)が黒く壊死したもの
私たちの栽培では発生頻度があまり高くないですが、非常に問題となる不良果です。壊死した部分は食べられませんし、見た目のインパクトがすごいため、通常は流通することがない不良果です。
発生する原因はカルシウム欠乏です。ただ、土壌のカルシウムが不足していることだけが原因とは限りません。土壌に十分カルシウムが存在していても、肥料バランスの乱れ、水が不足、水が過剰などで尻腐れ果が発生することがあります。このように土壌中のカルシウム不足の他に色々な原因がありますが、カルシウムの大きな特徴である、植物体内で一度利用されたら再利用されることはほとんどない(転流しない)という性質が関与しています。他の窒素などの養分は不足した時に他の組織から再利用することで融通を利かすことができますが、カルシウムはほとんど再利用されず、融通が利きません。そのため、根からの供給が非常に重要になります。
次に、カルシウムは十分あるのにカルシウム欠乏が発生する要因を詳しく解説します。
水が不足:水が不足すると根から吸い上げる量が減ります。結果、カルシウムの供給も減ってしまい、カルシウム欠乏が起こることがあります。
水が過剰:水が過剰にあると、根腐りを起こし、根が傷みます。結果、根から吸い上げる量が減り、カルシウムの供給も減ってしまい、カルシウム欠乏が起こることがあります。
肥料バランスの乱れ:カルシウムはアンモニア態窒素や、カリウム、マグネシウムなどと吸収の際に拮抗します。その結果、カルシウムが十分にある環境にも関わらず、カルシウムの供給も減ってしまい、カルシウム欠乏が起こることがあります。
私たちが栽培するトマトで、尻腐れの発生頻度が高くない理由は、養液土耕栽培と使用している液肥(タンクミックスSA、タンクミックスB)が大きく寄与しています。
養液土耕栽培:専用の液肥混入機を用いて、細かなかん水、施肥が可能。結果、水分不足、水分過剰を回避できます。
タンクミックスSA、タンクミックスB:カルシウムが十分含まれ、拮抗するアンモニア態窒素を入れずに、拮抗しない硝酸態窒素を主体にしている液肥です。カルシウム欠乏対策がしっかりしており、尻腐れ果にお困りの方には非常におすすめです!
また、弊社で扱っているカルシウム肥料のカルハードもおすすめです。栽培中に、カルハードを直接作物体へ散布することで、カルシウム欠乏に由来する種々の生理障害の防止に役立ちます。

↑小玉果
規定のサイズまで大きくならなかったトマトです。ここまで小さいと出荷の規格に合いません。トマトの樹勢に対し、果実数が多すぎた時や、同じ果房の中で着果するタイミングに大きなずれがあると生じやすいです。

↑窓あき果
現象としては前回ご紹介したチャック果と同様のものです。花の発達段階で果皮となる子房壁に異常が生じた場合に発生します。低温環境などで発生率が上がるといわれています。

↑奇形果
奇形のもので判別が難しいものをまとめて呼んでいます。現象としてはチャック果、窓あき果に近かったり、花落ち果で紹介した花芽分化期の異常により、子房の心皮数や子室数が増加などが起きていると思います。
以上、色々な不良果②でした。
尻腐れ果について熱く語りすぎてしまいました。尻腐れ果は高糖度トマトを作ろうとしたときに起きやすい不良果でもあります。
今回、紹介した不良果はスーパーで見かけることがほとんどがないと思いますが、尻腐れ果を筆頭に農家さんが苦労している不良果です。
これらの不良果が発生しにくい管理方法を皆様にご紹介できるよう、これからも研究に励みたいと思います!
つづく、、
※名前とメールアドレスは公開されることはありません。