徳島いちご担当の ” ざわ ” です。
今回作付けの最終収穫日は5月9日でした。液肥の給液は4月30日までとし、以降の給液は水のみにして、培地中に残った養分をイチゴに吸収させました。現在は、本圃の培地を太陽熱消毒しています。今回のブログでは、本圃の太陽熱消毒の様子についてお届けします。
イチゴの品種の多くは、土壌病害に対する抵抗力が弱く、容易に感染や発症をしてしまうと言われています。どんなに育苗に手間をかけて元気な株を作っても、定植する培地が菌で汚染されていたら、それまでの努力が水の泡となってしまいます。そこで、作が終わると、次作の準備として土壌消毒、または培地消毒の実施が必要となります。消毒の方法はいくつかあり、イチゴの高設栽培では、夏季の高温を利用する太陽熱消毒が最も一般的な手法です。具体的な方法については、実際の作業の様子とともに紹介します。
5月12日に、地上部のクラウン部分をハサミで切り、しばらく放置して作物の水分をある程度飛ばしてから、地上部を撤去しました。
5月19日に、点滴チューブと炭酸ガスチューブを培地の上に乗せたまま、上から透明マルチをかけて、パッカーでマルチを固定し、なるべく密封状態を作りました。この時、培地は湿らせた状態にしています。培地が乾燥していると隅々まで十分に熱が伝わらないので、事前に水を与えておきます。ハウス内の換気扇をOFFにして、外部遮光を外し太陽熱消毒を開始しました。太陽熱消毒を始めると、培地温度だけでなく、ハウス内温度も高温となるので、ハウス内にある液肥混入機など機械類の主電源を全てOFFにした方が良いです。
基本的に太陽熱消毒はハウスを閉め切った状態で行います。本試験場では、5月下旬から6月上旬における晴天日の培地温度が最高55℃、最低33℃でした。7月~8月の時期であれば、培地温度は最高60℃くらいまで上がりますので、太陽熱消毒の実施時期としては、5月~6月よりも梅雨明け以降の7月~8月が最適です。
本試験場では、次作のイチゴの定植時期を7月中旬にする都合、この時期の消毒となりました。
さて、太陽熱消毒では、培地温度を何℃まで上げてどれくらいの期間を必要とするのでしょうか。
一例として、イチゴ萎黄病菌(F.oxysporum f.sp.fragariae)の死滅条件を紹介します(下記表参照)。これを見ると、55℃を連続12時間維持することで土に存在する菌を死滅させることができるようです。実際の圃場で培地温度を55℃12時間保ち続けることは厳しいです。太陽熱消毒の期間は、天候不順も加味して、2週間~1か月くらいが目安となります。
また、上記表の数字を比べると、同じ温度でも病株根冠部(植物体内)と自然病土(土壌中)では、死滅までに要した期間が異なることが分かります。自然病土の方がより長い期間を必要としています。イチゴ萎黄病菌は、耐久性の高い厚膜胞子となって土壌中に数年間残存することが知られています。このため、消毒温度が60℃の場合、植物体内の菌は消毒時間が1時間で済むところ、土壌中の菌では12倍もの時間が必要となるのです。
現在の育苗の様子はこちらです。まだ病気にかからず、元気な状態です。
毎年、夏季の暑さが更新されている中、イチゴの苗不足が深刻な問題となっています。殺菌剤の予防的散布や本圃の消毒を徹底的に行い、丈夫な苗を揃えて今年の定植を迎えたいですね。
次回は育苗の様子についてご紹介します。
つづく、、、、。
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