プロバイオポニックス技術によるトマト栽培①

2024.10.03

2024年10月3日

プロバイオポニックス担当の ”のり” と申します。

今後は定期的にプロバイオポニックス技術によるトマト栽培の様子をお届けしていきます。     どうぞお付き合いの程、宜しくお願い致します。

OATアグリオ 栽培研究センターではイチゴ、トマトをメインに様々な作物の養液栽培技術の研究を行っておりますが、そのなかでも異色なのがプロバイオポニックスです。                今回は第一回目ということでプロバイオポニックスとは??についてお話したいと思います。

そもそもプロバイオポニックスとは??

プロバイオポニックス とは農研機構により開発された栽培技術で「プロバイオティクス」と「ハイドロポニックス」を掛け合わせた造語です。その栽培形式は名の通り「有用微生物」にバイオマス(食品加工時に出る残渣や副産物、その他生物に由来する未利用資源)を分解させて生じた無機態窒素を養分として栽培を行う「養液栽培」です。

一般的な養液栽培では窒素、リン、カリなどの各要素がバランスよく配合された化学合成肥料を用いますが、プロバイオポニックスでは全ての要素をバイオマスや鉱物資源でまかなわなければなりません。加えて、使用する培養液においては微生物にとって好適環境でも作物にはそうではないこともあり、両者の好みが一致する狭い範囲で環境制御を行わなくてはならず、栽培における難易度は跳ね上がります。

難しいならこれまで通りの養液栽培でいいんじゃないの?

そう思われる方も多いかもしれません。しかし化学合成肥料(特に無機態窒素)は製造に化石燃料を用いることで温室効果ガスを排出するなど使い勝手がよい一方で環境負荷が大きいという負の面も持ち合わせています。加えて化石燃料の枯渇による持続可能性の懸念もあります。

一方でプロバイオポニックスは化石燃料のエネルギーに代わり微生物の力で無機態窒素を生み出すという点で環境調和型、かつ持続可能な栽培法となりえます。また環境面だけでなく、化学合成肥料を入手しずらい地域や発展途上国などにおいても、現地で出るバイオマスで栽培が可能となるため食糧問題にも貢献しうる可能性も秘めています。

以上のように、プロバイオポニックスは農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略(2050年までに輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量の30%低減を目指す)」やSDGsの目標2「飢餓をゼロに」に合致する栽培法であり、化学合成肥料を用いる慣行法に替わる次世代型農業の一つの方法論として早急な技術開発が望まれています。

プロバイオポニックスの現状

プロバイオポニックスは弊社ほか、数社により社会実装に向けた研究が進められています。農家さんと協力して実証試験を行っている段階にある作物もある一方で、栽培可能な作物に制限があるのが現状です。また、実際に栽培を行うにあたっては煩雑な操作や多頻度の資材添加が必要など、省力化の面でも課題を残しています。

またプロバイオポニックスが社会普及していくには生産者にメリットが必要です。この点については慣行栽培作物との差別化による有利販売を可能とするため、2022年に日本農林規格(JAS0021)「プロバイオポニックス技術による養液栽培農産物」が農林水産省より公示されました。併せて特色あるJASを表す「特色JASマーク」も制定されました。

OATアグリオの試み

OATアグリオ 栽培研究センターでは、養液栽培用肥料の開発で培ったノウハウを応用し、独自処方のプロバイオポニックス専用肥料を用いて各作物の栽培検討を行っております。現在までに葉菜類をはじめ、イチゴ、トマト、メロンの栽培に成功しております。また弊社の肥料と技術を用いることで作物によっては慣行法と比べて収量や糖度が高くなるなどの特色があることもわかってきました。

今後は慣行法よりも優れた収量・品質はもちろんのこと、社会実装に耐えうる技術に仕上げ、OATアグリオの企業理念である「食糧増産技術と真心で世界の人々に貢献します」を体現できるような技術にしていきたいと考えております。

次回予告!

次回のプロバイオポニックスについてのブログは11月の最終週に掲載予定です。

栽培の様子などを掲載していきますので次回もお楽しみに!

※プロバイオポニックスは国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の登録商標です。

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